僕が空から地に降りたのは、そんな理由じゃないよ
ただどんな子なのか少し
気になっただけ・・・
Oneiromansy.2
「・・・どうして?」
少年の質問に、ラクスはあいまいに笑って答えた。
「なんとなく、でしょうか。そんな気がしましたの。
最初は不審者かと思いましたけれど・・・」
「不審者・・・ですか。」
少年は、また困ったような顔をしている。
「ええ。けれど貴方からしてみれば、わたくしの方こそが不審者ですわね。
申し訳ありませんでしたわ。許可無く立ち入ってしまって。」
「いえ、そんなつもりでは・・・ただこんな森の中に一人で入ってくる女の子ってどんな子だろうって思って・・・。」
「あら。いけません?」
「いや、そうじゃなくて・・・え―っと・・・。」
あわてていた少年は、目の前のラクスがくすくすと笑っているのに気が付いて少し嬉しくなった。
「あら。どうして笑っていらっしゃるんですの?」
『それは僕が君に聞きたい・・・』
少年はそんな顔をしたが、黙って質問に答えた。
「貴女が初めて笑ったから・・・」
ラクスは不思議そうな顔をして「わたくしが?」と聞き返した。
「うん。この村に来てから一度も笑ってなかったから。
あ・・・勿論笑ってたんだけど、なんていうのかな・・・『営業用スマイル』?」
ラクスは黙ったままなにも言わない。
少年はなにか言ってはいけないことを言ってしまったのかと、またオロオロし始める。
「貴方はすごい方ですのね。わたくし全く自覚しておりませんでしたもの」
ぴくり、と少年が反応した。
そして静かに目を伏せた。
「僕はすごくなんてないよ。前のひとは、色々凄かったらしいけど。」
「前の人?」
「え、あ、いや、うん。なんでもないよ。」
そういって少年は笑った。
「そういえば・・・森の番人さんは素敵な紫色の目をしてらっしゃいますのね?」
と、突然ラクスは口を開いた。
「・・・そんなことないよ。」
「いいえ!そんなことありますわ!紫色の目って、わたくし見たことありませんでしたもの。
きらきらしてて、神秘的でとてもいいと思いますわ。」
「・・・ありがとう。」
森の番人(仮)は少し照れくさそうに微笑んだ。
すると彼の茶色い髪が、木の葉の間を抜けて差し込んだ光を浴びてキラキラと輝く。
「どういたしまして。でも森の番人さん、髪もさらさらつやつや。羨ましい限りですわ。」
「そうかなあ?貴方の方が長くて、綺麗な桜色をしてていいと・・・じゃなくって!!」
「じゃなくって?」
いつまでもマイペースな話に巻き込まれそうになりながらも、少年は一生懸命(?)主張する。
「僕は別に森の番人じゃないですよ?」
「まあ、そうでしたの?でしたらお名前を教えていただけます?
・・・もしよければ、ですけれど。」
「キラ。キラ=ヤマトです。」
慌てていたためつい、昔使っていた姓まで言ってしまった。
「わたくしはラクス=クライン。
キラ様。お話し相手をありがとうございました。
わたくしとてもつまらなくて・・・でも貴方のおかげで、とても楽しかったですわ。
またどこかでお会いしましょうね。では・・・。」
「あ、あのっ・・・!!」
そういってキラは帰ろうとしたラクスを引き止めた。
「どうかなさいましたか?」
キラはいつものぽやっとした表情を消してラクスに告げた。
「この先なにか厄介なコトに巻き込まれそうになったら、僕の『名』を呼んで下さい。
それからくれぐれもあの村長には気をつけて・・・なにか奇妙な『気配』がする。」
「・・・わかりましたわ。どうもありがとう、キラ様。」
「どういたしまして。けどキラでいいです。ラクス。」
少年の言葉にラクスはにっこり今日一番の笑顔で応えた。
「それではさようなら、キラ。」
「お〜やったじゃん、キラ!!」
「まったく・・・あいつはなんでまた人間なんかに・・・」
「いやぁ、でもあのピンクの髪の子結構可愛かったぜ?」
「あんな風に話してられるか!!」
「「そりゃイザ―クはな・・・」」
先程見た城の中はお祝いムード真っ只中。
けれどその中で藍色の少年だけが異を唱えた。
「それはそうと、あの子・・・」
「おいおいアスラン。いくら幼馴染のキラにまで好きなのが一人や二人できたからって拗ねるこたぁねぇだろ?」
「そうだぞアスラン。男の嫉妬ほど醜いものは・・・」
「だからそっちじゃなくって!!あの娘が人間かどうか、ということだ。」
「は?どうみても人間だろ?」
「いや、なにか別のモノが混じっている。おそらく1/4ほど。」
「ま、いいんじゃねーの?そういうやつらは五万といる。」
「・・・ああ、そうだな。」
まだ疑問が残っている顔でアスランと呼ばれた少年は話を打ち切り、散らかった部屋を出た。
あー少しは進みましたね。ほっと一安心。
あ、今回最後の方に最近のマイブームな人がでております。面白いなぁ、この人。おまけに意外と扱い易い(今のところ)