『いらっしゃい』
愚かで無知な小娘よ
まんまと嵌りおってからに・・・
そう老人は一人暗く嗤った
Oneiromansy
「母ちゃん、婆ちゃん、占いしてくれる人来たってさ」
「なんだい、顔も見せず頭からマントを羽織ってやがる。気味が悪いねぇ。」
「今年はあの年だよ。そこらのガキどもは大祭だ、って騒いでやがるがね。
あの子女の子らしいじゃないか。
案外村長はあの子を今回の祭りの『姫』とするつもりで連れてきたんじゃないのかい?」
「もしそうだとしたら、今回は村の娘を誰も犠牲にせずに済むねぇ。」
村の人々が自分を見ている。
「いらっしゃい、よくきてくれました」という歓迎の気持ちや、珍しい物好きの好奇の目ではない。
もっとなにか別の感情だ。
それに見られている、というよりも
―――――見張られている?
もしそうだとしたら何故?
自分には全く心当たりはない。
いままでこの村とは国境を隔てた向こう側の国で、ただの占い師をしていただけだ
そこでも特に問題を起こしたわけではない。
変な客に絡まれたこともない。
――――だいたいわたくしココの人たちとは誰ともお会いしたことなどありませんのに・・・
少し怖くなって少女ラクスは頭からすっぽり羽織ったマントのフードをぐっ、と下に引っ張った。
今は誰とも話したいなどと思えない。
仕事柄ゆえか、人と接し、話したりするのが好きなラクスだがこの村の人々は別だった。
―――ご依頼にきたこの村の村長さんがあまりに熱心におっしゃるから参りましたけれど・・・
このお仕事、早く終わらせてすぐにでも自分の国に帰ろう・・・
―――けれど村長さんはどうしてわたくしなどに?
わたくし程度の占い師なら他にもたくさんいらっしゃるのだから、
もっと風格のある方を雇われればよろしいのに・・・
しばらくすると考え込むことにも飽きてくる。
占いの仕事をするのは明日の夜だ。
そう思い、そっと自分にあてがわれた部屋を出た。
ラクスがいるのは村長の自宅だ。
自分が依頼したのだから、といい家に招いてくれた。
けれどなぜだろう。
やけに人気が多い。
村長の家だといってもこんなに人の出入りが多いものなのか。
――――それともあの村長さんは余程人気なのでしょうか。
確かに人のよさそうな印象を与える笑い方でしたけれど・・・
ぼぅっとまた考え事をしながら廊下を歩いていたラクスは、後ろから突然声をかけられた。
「もうすぐ大きな祭りがあるのですよ、ラクス=クライン嬢。」
驚いて振り向いた先にはにこにこと笑っている村長がいた。
「お祭り?」
不思議そうな顔をするラクスをみて村長は苦笑した。
「ええ、大地に巣食う冬の悪魔を追い出して、新たな春の豊穣を願うのです。」
「わたくしたちの国の謝肉祭と同じようなものですのね」
ラクスは一人、納得したように頷いた。
「ああ、そうですわ村長。わたくし少し退屈してしまいましたの。
すぐそこを散歩してきてもよろしいですか?」
「勿論ですとも。なんなら村の若い者に案内させましょうか?」
村長の言葉にラクスは笑って首を振った。
「いいえ、御気使いなく。みなさんお祭りの準備でお忙しいでしょうから1人で行って参りますわ。」
彼女はそういって村長に軽く頭を下げ、家を出て行った。
「とは言ったものの、どこへ行こうかしら・・・。」
きょろきょろ辺りを見渡していると、今まで気付かなかった森が目に入った。
ちょっとした冒険気分で踏み込んでみると思ったよりも深い。
樹齢100年は越しているのでは、と思うくらい立派なブナの木や足元に生い茂った苔。
そしてたまに姿を見せる小動物。
とても綺麗だった。
またそこらじゅうを観察しつつ、大分長い間歩いているうちに不思議なモノが見えてきた。
―――・・・お城?それもイマドキのではなくひと昔前の。いえ、近くで見ないことにはなんともいえませんわ。
「あ、あんまりアレに近寄らない方がいいよ。」
「え?」
後ろから声をかけられた。
―――わたくし最近アヤしい方とよく遭遇しますわね
本当に危ない人だったらどうしましょう?
振り向いた途端、ナイフをふりかぶって・・・
「あ、あのぅ・・・」
「あ・・・はいなんでしょう?」
ラクスは無理矢理笑みをはりつけて、ぎこちなく声の主へと振り返った。
振り返った先には困った顔をした少年、おそらく自分と同い年くらいの
「え―っと・・・あ、そう!あまりあのお城に近付かない方がいいですよ。
それに、この森にも。」
「お城と、この森にも・・・ですの?」
「ええ・・・ああ!貴女はこの村の人じゃないんですよね。
ん―っと、この村には昔からいろんな伝説とかあってね。
それらの内容には全てあの城とか、森とかが関係してるから。
だから村人達はココに踏み込まない。近付かない。」
少年はほんの少し寂しそうに微笑んだ。
そんな少年を見て、ラクスはぽつりと呟いた。
「貴方も・・・ここがそんなに恐ろしい場所であると、そうお思いなのですか?」
「え・・・?」
「わたくしにはそうは思えない。ココはとても綺麗。だってココを護っているのは・・・
貴方なのでしょう?」
きゃーやってしまいました!!パラレルってたのしー!けど進まない…。
と、とりあえず頑張るぞー!おー!!(←少し寂しい…)
5.迷いの森
14.四面楚歌
27.死に行く君へ
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