春の舞 2
「お兄ちゃん!朝だよ!起きて下さい!!」
そういって少女は兄のベッドの上に、ぽんっとダイブする。
…と毛布の下から、むぎゅっとつぶれたような音がした。
「お兄ちゃん、早く起きて下さいな!いつまでも寝ていたらおめめがくっついちゃって開かなくなちゃう、ってこの前お母様が言ってたよ!!」
そういって彼女は兄の上に乗ったまま、無理矢理毛布を彼から引き剥がそうとする。
「待って、プリシス。もう少しだけ…あと5分だけ寝かせて…」
毛布の中から、もごもごと眠そうな少年の声が聞こえる。
そんな兄を見て、少女はぷうっと頬を膨らませた。
「お兄ちゃん!!今日はみんなでお花見に行くんだよ!早くしないとお花が散っちゃう!!」
数分じゃお花は散らないよ…と思いながら、毛布の中から少し顔をだすと、そこにあるのは頬を膨らませながら少し目を潤ませた妹の姿。
「折角早起きして、プリシスもお母様も頑張ったのに…。」
いまいちナニを言っているのか掴めないが、溺愛している妹が泣きそうな今、自分が素直に起きるしかないと少年は悟った。
「わかったよ、プリシス。お兄ちゃん起きて着替えたら行くから、プリシスは先にテレビのお部屋に戻っておいて?」
そう告げると彼女の表情はぱっと明るくなって、嬉しそうに笑った。
そしてぱたぱたと走っていく音がする。
少年は少し残念そうに、けれど顔を緩ませながら暖かいベッドから離れる。
まだまだ眠いが妹がわざわざ起こしにきたのだからそろそろいかなきゃ…そう思ってうんっと伸びをした。
窓の外からは明るく暖かい春の光。