の舞 3

 

 

 

 

    少年がのそのそとリビングに向かうと意外なことに、そこには父親がいた。

 

    いつも自分よりも寝起きの悪い人が、だ。

 

 

    「…父様?」

 

 

    まだぼーっとしたままの人は、それでもいつもどうりのぽやっとした表情を浮かべて彼の方を振り返った。

 

 

    「…ああ、フィル。おはよう。今日もいい天気だね。」

 

 

    「そうですね、花見をするには絶好の…じゃなくて!

 

どうしていつも俺よりずっとねぼすけで、起こしても起きない父様が今日に限って僕より早く起きてるんですか!?

 

 

「すごい言いようだね…フィル。」

 

 

そういって父様は苦笑した。

 

 

「う〜んとね、ラクスに『今日はプリシスがわたくしが作ったサンドウィッチを詰めるのを手伝ってくれましたの。

 

 その様子はとても一生懸命でキラにも見せてあげたいと思うほどでしたのよ?父親として勿体無いことをなさいましたわね、キラ。』

 

…っていわれたんだ。」

 

 

「そ、そうですか。」

 

 

自分は父親にのろけられているんだろうか…?

 

 

でも…と父様は続けた。

 

 

「そこでラクスの声が少し冷たくなったんだ…『いつまでわたくしの話を背中で聞いてらっしゃるつもりですの?』って」

 

 

ぞくり…

 

 

「そ、それで今日はこんなに早いんですね?」

 

 

父様がこくりと頷こうとしたとき後ろの方から声がかかった。

 

 

「あら、11時は早いとはいいませんわよ?2人とも。

 

さあ、わたくしたちの準備はできておりますの。そろそろ出発したいのですけれど…?」

 

 

 

 

 

外はぽかぽか春の陽気。

 

けれど折角楽しみにしていたお花見の日に寝坊した父様への母様の怒りは、まるで冬に吹く北風の様でした…

 

 

 

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