真っ白なところ。
 
なにもなくて、誰もいなくて
そんなところに僕は丸くなって座っていた。
 
なにもないけど別に寂しくもない。
なにも感じなかった。
 
このままでいいや、って。
 
 
そんな時誰かの泣き声が聞こえた。
誰かが僕を呼ぶ声が聞こえた。
 
「キラっ!」
 
女の子の声だ。
誰?
僕が…『キラ』?
 
ふと伸ばされるいくつかの手。
 
その中の一番最後…おそるおそるといった感じに伸ばされた白い小さな手を、僕は掴んだ。
その手はやっぱり小さくて、でもすこしあたたかかった。
 
 
 
 
 
 
 
 
僕が望む永遠-03-
 
 
 
 
 
 
 
 
降りたての雪みたいにあやふやだった感覚がしだいに戻ってくる。
それで最後に掴んだあの手がまだ、そのままの暖かさで残っているのに気が付いた。
 
椅子をベッドの横に置いて、看病してくれていたのかもしれない。
一人の少女がぱたりと、僕の上に寄りかかって眠っている。
 
長い桜色の髪がふわっとベッドにひろがっている。
 
つんつんとつついてみても起きる気配がないので、いいかなと勝手に思い込んで頭を撫でてみた。
 
ふわふわとした感じがすごく気持ち良くて、つい調子にのって長い間そうしていた。
 
 
「ラクス、そろそろ…」
 
そういって金髪の女の子が入ってくるまで。
 
…って、キラっ!?」
 
あぁこの子ラクスっていうのか、なんてぼんやり思っているうちに彼女の目的は僕に変わったらしい。
 
「おまえ、いつ目が覚めたんだよ?」
 
「ん…ちょっと前…」
 
「そか、いやよかったよ。もう起きないかと思った。ラクス、起きろ。キラやっと目が覚めたって。」
 
んっ…と彼女の声を聞いてか、眠そうに『ラクス』が身じろぎした。
 
「やめなよ、まだ寝てるのに。ラクスはすぐ無理するから、いまぐらいゆっくり寝かせて…」
 
そこまで言って、あれ?と首を傾げた。
 
知らないのに、なんで…?
 
…あら、カガリ。もう朝ですの?」
 
ぼぅっとしたままで、彼女は金髪の子に問掛けた。
 
そして繋いだままだった手に気付く。
 
視線は僕に。
 
蒼い瞳が驚いたように見開かれて、僕を見ている。
 
「キ…ラ…」
 
少しかすれた、高めの澄んだ声。
 
それはさっき僕を呼んだ声と同じで
 
 
みるまに目の前の少女が泣きそうな顔になっていく。
 
 
よくわからない…というかまったくわからない。
 
まわりは知らない人だし、自分もよくわからないこといい始めるし。
 
…けど。それでも、目の前のこの子が泣きそうだっていうことはわかるから。
僕自身が、そうなることが嫌だって思っていることもわかったから。
 
だから、なんとかしようと思った。
 
けどやっぱりよくわかんなくて、とりあえず当たり障りのない言葉をかけた。
 
「おはよう…ラクス」
 
それでも彼女の泣きそうな顔はなおらなくて、泣き笑いみたいな顔になって…でも確かに笑ってくれた。
 
…おはようございます、キラ」
 
 
 
 
空に昇る太陽が、優しく窓のカーテンの隙間から光を溢していた。
 
 

 

 

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