空からみるそこは、いつものからりとした印象とは少し違う。神秘的で美しいけれど、どこか淋しいそう感じるのは夜だからというだけじゃ、きっとない。 僕が望む永遠-02-
「ラクス、こっち!」 シャトルから降りて、あたりを見回していると馴染みのある声が聞こえた。 「ミリアリア…さん?」 「そ。久しぶり!あっと…それより早く乗って、乗って!」 ぱたぱたと手招きしている彼女の方へいくと、助手席に入れられた。 ちゃんと座ったのを確認すると勢い良くアクセルを踏んで、もの凄い速さで走り始めた。 「あの、ミリアリアさん…。」 「ん?あ〜なんで私が来たかってとこ?それならたまたまよ、たまたま。」 「たまたま…?」 「そ。なんかね途中で偶然カガリと会って、『キラが撃たれて、ラクスが来て、迎えにいって』とかなんとかゴチャゴチャ言ってたから、ちょっと手伝ってあげただけ。あ、私この後まだ仕事で戻らなきゃなんだけど。…とりあえずは一命はとりとめたみたいよ?」 「そうですか…それはよかった。」 ほぅっとため息をつくと、隣でもうんうんと頷いている。 「まったくよね。もう。でもカガリも相当きてるみたい。別にあの子がなにかした訳じゃないのにね…」 「ついたわ、ここよ。」 目の前にあるのは大きな総合病院。 「じゃあ、私行くから。なにかかわった事とか、困ったりしたら連絡して。あとこれ。」 差し出されたのは病室が書かれた一枚の紙。 「いろいろと…ありがとうございます。」 「いいわよ、こういうのってお互い様でしょ?」 そう彼女はにっこり笑った。 歩くとキュッと音がする白い床。 壁も天井も真っ白で清潔な感じがするが、どこか冷たい。 しばらく歩いて、ラクスはある扉の前で立ち止まった。 ミリアリアにもらった紙と、部屋番号を見比べる。 「ここ…ですわね。」 コンコンと軽くノックすると中から小さくかすれた声がした。 そっと扉を引いて中に入る。 まず目についたのは小さな姿。 「カガリさん…」 「ああ、ラクス。ごめんな、忙しいのに。」 「そんなことありませんわ。連絡してくださらなかったら私、きっと知らないままでしたもの。あ、アスランには?」 「あ゛っ…忘れてた。」 「まぁカガリさんってば。」 くすくすと笑いあって。 けどやっぱりどこか違和感があった。 ラクスはそっと金色の髪に手を伸ばす。 そして子どもにするように、よしよしと撫でてやる。 「…ゴメン」 ひなたぼっこの猫みたいに目を細めて、おとなしく撫でられていたカガリがぽつりと呟いた。 「…なにが、ですの?今日のことを仰っているんでしたら、お断りですわ。あなたは、なにも悪くないでしょう?」 「ラクス」 「それに今あなたがそんなふうに思ってるだなんて知ったら、きっとしょぼーっとなってしまいますわ。」 ね?ラクスがそういうと彼女はきゅっと唇をかんだ。 金色の瞳に涙がたまっていく。 「ラ、ラクスっ…」 ふぁぁんと泣きながら抱きついている彼女は、代表首長である公の姿とはあまりに違っていて。 よしよしと撫でてやりながら呟く。 「大丈夫、きっとすぐ目をさましますわ。」 カガリを励ますように。 自分自身にいい聞かせるように。 けれどそれから数日、彼が目を覚ますことはなかった。
−03−