SlapStick!



ガラ――…






「失礼します、ハボック先生は――…」
「ローイっ〜vVvV」


がばちょっv



中央学園高等部3年、ロイ・マスタングは、成績優秀容姿端麗。
クラス委員長はもちろんのこと、生徒会長までしっかりとこなす真面目を絵に描いたような生徒である。
今日ロイは、担任の教師に用があり職員室の扉を開けた。
途端、体全体がヤニ臭い匂いに覆われる。
目の前には分厚い胸板、首の辺りにはごつい腕が二本、またか…と思いロイは溜息を吐いた。


「ハボック先生、文化祭のクラス企画書に担任のサインがいるんで、サインしてください。あと学園内は禁煙のはずです。ついでに離れてください」
「相変わらず冷たいなー…先生は泣いちゃう(泣)」
「どうぞ、存分に」
「………(泣)」


纏わりつく担任を引っぺがし企画書を押し付ける。
と担任、ジャン・ハボックは嘆きながらペンを走らせた。
ジャン・ハボックは一言で言うと不真面目教師。
学園内禁煙にも関わらず常に煙草は放さない。
デカイ図体にデカイ声、一見厳つそうに見える彼だが生徒からの人気は学園一という少し変わり者。


「おし、出来たぞーvV」
「有難うございます。じゃぁ失礼しました」
「ちょっ待った待った!!」
「何か…?」


サインされた企画書を受け取ってさっと職員室からでようと踵を返したロイの腕をハボックが掴み引き止める。
訝しげに振り返るロイにちょいちょいと手招きをして自分との距離を縮めさせた。


「ローイv」
「…何ですか?」
「何か忘れてるだろ??」
「?」


ニヤニヤと笑んでロイに訊ねるハボック。
企画書のサイン以外に一体何かするべきことはあっただろうか?ロイは頭の中を探りつつ頭に?マーク。
するとハボックは自分の右頬を指差し軽く抑えてみる。


「??」
「わかんない?」
「全く」
「しょーがないなぁー…」
「?あの…?」
「ちゅーvVvV忘れてんだろvVvV」
「はぁっ?!//何言ってんですかアンタ!!」
「サインしてやったんだからお礼は当たり前だろー??vV」
「何言ってるんですか!!//サインするのは担任として当然のことでしょう?!//」




バッチンっ!!



「Σい゛(泣)」


突き出された頬を思い切り叩いてロイは職員室を後にした。
後に残されたハボックはというと……






「ローイー…」


まぁ安易に想像していただけるだろう。


「ハボック先生。職員室で生徒を口説くのは止めた方がいいんじゃないかしら?」
「?ぁ、ホークアイ先生…ι」
「あなた上の方には評判悪いんだから気をつけなさい」
「へーいι」


机に突っ伏したハボックの左隣から澄んだ女性の声が。
顔を左へ回すと自分と同じ色の髪を肩辺りまで垂らしたホークアイが目に入る。
その表情は叱っても叱っても悪さをする子供を見る母親のようだ。
つまりは注意しても注意しても生徒を口説こうとするハボックに呆れている、といった所だろうか。


「まったく、減給になっても知りませんよ」
「減給くらいで俺の愛は押さえられません」
「…勝手にやってちょうだい」


呆れた…心底そう思わせるような顔をしてホークアイは席を立ち上がった。
そのまま廊下へと続く扉まで歩く。
おそらく保健室へ行くのだろう。
紹介し忘れていたがホークアイは保険医なのだ。
彼女はそのまま扉を開け職員室の外へと出て行った。
その様子の一連を煙草を咥えながら目で追う。

今日のホークアイの服装は紺のスーツ。
スカートは膝上10cm辺りでスラっとした白い足が惜しげもなく晒されていた。




色っぺー…
足とかヤベー…




ハボックがそう思ったのは言うまでもない。

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

「あ゙ー…ウザイッ!!」
「大変そうね」
「毎日あの調子だ!!アイツに何とか言ってやってくれないかッ?リザ!!」
「…無駄よ?」
「ぅ゙ー…」


所変わって保健室。
先ほどから多少時間が経ち、今はもう昼休みだ。
箸で弁当を突付きながら嘆いているのは朝ハボックに言い寄られていたロイ。
彼の向かいに座りコーヒーに口をつけているのはココ、保健室の主ホークアイだ。


「ハッキリ言ってやればいいんじゃない?」
「言ってるじゃないか。今朝も見てただろう?」
「決定的なこと言ってないじゃない。その気がないなら嫌いだって言うべきよ」
「…そ、だな」
「本当にないの?」
「ぇ、何が?」
「その気」


コーヒーカップを机に置いてホークアイは資料整理を始めた。
彼女の問いに目を瞬かせた後ロイは肌の色に大きく変化を見せる。


「真っ赤。少しはあるんじゃない?その気」
「!//ッない!!//絶対無い!!無い無い無い無いッ!!!!///」
「あらそう」
「無いに決まってるじゃないか!!//変な事訊くなリザの馬鹿!!!///」
「じゃぁ…私が貰ってあげるわ」
「………へ?」
「彼、素敵じゃない。私のタイプよ」

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

「ハボック先生」
「何すか?ホークアイ先…Σぁあぁぁあのッッ?!?!////」
「今晩お暇かしら?」


昼休みが終わり、午後の授業も終わり、今は下校時刻を少し回った時間だ。
殆どの生徒は既に校門をくぐり抜けた後なので、校内はえらく静かで、職員室にはハボックとホークアイの二人しかいなかった。
そんな中ホークアイがハボックの左腕を抱き込むようにして口を開く。
当然彼女の豊満な胸はハボックの腕に押し付けるわけで。


「こッ今、晩…ッ?//;って…///」

胸が当たってるんですけどー…///;

「ちょッせっ先生ッッ!!?/////」
「えぇ、今晩…いけないかしら…?」


ハボックの左腕を解放し、今度は自分の頭より数段高い位置にある首へと両腕を絡めるホークアイ。
先程とは違い、躯全体が密着した状態になる。


「っ先生…ッ!!///少っ…し…ちッち近ッッくないすか?!?!?!/////;」
「あらそう?私はもっと近い方がいいのだけれど」
「なッ?!?!///ッΣのぉぉわぁッッ!////;」
「ねぇ、センセ…?お暇でしょう…?」


ホークアイは絡めた両腕を自分の方へ引き寄せ、自分は後ろの机に倒れこむような体勢を取った。
必然的にハボックはバランスをとる為ホークアイの身体を挟んで机の端を抑える。
簡単に言うと、ハボックがホークアイを押し倒したような…そんな体制。
現状にいつもと違う上司に慌てまくる相手に構わず、ホークアイはハボックの頬を手で撫ぜた。





ガラ――…




「ハボック先生居られますか?文化祭の企画書で不具合が―…」
「Σ!!」
「あら、ロイ」
「………」


タイミングの悪いことこの上ない。
扉のところには数枚の紙と分厚い本を抱えたロイが。


「ロっ…ぁ、これはッ…その…っ///;」
「…ぅ」
「ロ、ロイ…さん?;」
「馬鹿野郎ー――ッッッ//!!!!!!!」
「Σっだぁぁッ?!?!?!」


わなわな震える、とはこのことだろうか。
ロイは扉付近で震えながら持っていた紙数枚と分厚い本をぶん投げた。
勿論、ハボックに向って。
紙は重みに欠けていたので飛距離は無く、ひらひらとロイの周りを舞っただけだったが、分厚い本は違う。見事ハボックの顔面に直撃した。


「何だ貴様はッ!!!毎日散々私にチューしろだのなんだの言い寄ってきたくせに結局はソレか!!! ドスケベ!!!変態!!星へ還れッッ!!!!!」
「ほ、星…?ι」
「大ッッッッッッッ嫌いッ!!!!!!!!!!」

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

「ローイー…(泣)」
「嫉妬、ね」
「Σホークアイ先ッ…//」
「嫉妬、それは愛故に…よ」
「ぇ?」
「さて、それじゃぁ私はこれで失礼します」


ロイが走り去った後ホークアイは淡々と言っていつも通りの彼女に戻っていた。
先程の彼女は何所へやら、何事も無かったかのように身支度を整えると職員室のカギをハボックに差し出す。


「ぁの…?//」
「カギ、閉めておいてください」
「…はぁ」
「恋愛は、駆け引きが大事ですよ」
「!先ッ…」
「少し荒療治だったけれど、中々良いアイディアだったでしょう?」
「!!」
「あの子鈍感だから…全く手のかかる甥だわね…」
「Σぉ、甥ッ?!?!」
「コレで少しは自分の気持ちに気付いたと思うの」
「ぁのー…ホークアイ先生…?ι」
「いつまでも職員室で生徒を口説かれては困りますからね、さっさとくっついて頂戴」


言うだけ言うとホークアイは職員室を後にした。
残されたハボックはその場に座り込んだ。


「……嫉妬?ロイが……?」

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

消え失せてしまえッ!!!!あんな教師!!
馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿ッッ!!!!!!!
不潔だッ!!汚いッ!!!ゴキブリの方がマシだ!!
リザとあんなッ!!!!!



あんな…

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

『少しはあるんじゃない?その気』




「…………そうかも知れない…//」


だって、イヤだった…

 
 
 
 
 
 
 

自分の中にある小さな気持ちに小さく息を吐くロイ。
二人が恋人になるのはもう少し先の話になるだろう――…






END


紅音ちゃんより1200Hit時に頂いたハボロイですよ!
はぅっ…ありがとう。ついに我が家にハガレンがきたよっ!おかあさんっ!!
「ちょうだいっ!」とかずうずうしく言っておきながら長らくUPできずに申し訳ありませぬ。

保健室のお色気リザさん、なんてへんなこと行ってごめんなさい。でもありがとう(笑)だって男の夢でしょ?(違)
リザさん、優し。カッコい。なによりもんすげー色っぽ。私やっぱりアナタの書くリザさんが一番すきだわ。

と、とにかくありがとうございました♪
<追記>

あなたは素敵なコメディアンだと思いますヨ?(冗談です)