魔の巣窟 no.2
 
 
 
 
 
勢いよく王宮を飛び出し、王都を人目を気にしつつ逃げる。
2日はなんとかもったのだが、ついに3日目に追手に見付かってしまった。
56人のオーブ現国王直属の兵がじりじりと2人を追い詰める。
 
背後には下も見えないほどの崖。
 
おとなしく彼らにつかまり、連れ戻されるか。
よくわからない崖から飛び降りてみるか。
それとも…
 
「どっちも、ゴメンだッ!!
 
カガリはそう叫ぶと、腰の剣を抜き、切りかかった。
教育の一貫、護身術として鍛えられた剣術、及び格闘術に彼女は結構な自信があった。
 
順調に敵をのしていった彼女の前には、あと1人。
間合いを詰め、切りかかる。
が、簡単に止められ、蹴りとばされる。
ドサッと尻餅をついたカガリに、ミリアリアが慌ててかけよった。
 
そんな彼女に、大丈夫だと伝えようとしたその時、カガリにはイヤな予感がした。
 
グラリと足下がずれた。
 
次の瞬間には、隣にいたミリアリアと崖下へと落ちていく。
 
 
「…結局、こうなるのかよっっ!」

そんな叫びとともに、少女2人は暗い闇へと吸い込まれていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「でさ、俺達はナニをしてりゃいいワケ?」
 
いい加減飽きてきたというように、金髪に褐色の肌をした青年はぼやいた。
それに対し、一緒にいた銀髪蒼眼の青年は猛然と反発する。
 
「なにを言っている!たけのこと白トリュフを探すようにと、ラクス嬢から直々に『お願いv』されただろうが!!
「や、ってか『たけのこ』って春だし…そもそも白トリュフなんざここらにあるわけないし。」
「ラクス様がデタラメを言うはずがないだろう。」
 
胸を張って堂々と言い切る青年に「あ、そう。」と疲れたように返す。
 
しばらくぼーっとしていると、目の前の青年が顔をあげた。
 
「どうかしたか、イザーク。」
「…なにか聞えなかったか?」
「いや、別に
空耳だろう、と言おうとしてやめた。
 
バキバキと木の枝が折れる音。
最後にドサッという音がして、またもとの静寂が訪れる。
「…なんだったんだ?」
「さぁねェ…」
 
これがあの時、彼がおまけのように言った、でも本当は一番して欲しい事なのかもしれない。
そんな風に青年は思った。
 
 
 
 
 
 
 
 
『そうですわ。キラ、お二人にお願いしてはいかがでしょう?』
『僕は構わないよ』
にっこりと微笑みあうと、彼らは2人に向き直った。
 
そこから、拒否権ナシの『お願い』が始まる。
 
『たけのこと白トリュフをとってきていただきたいんですのこの森から。』
無理ですか、と小首を傾げて尋ねる彼女に、イザークが素早く反応した。
「いえ、喜んでお引き受けします。」
「おいっ
 
『まぁ。お二人ならそう言って下さると思っておりましたの。ではお願いしますわ。』
ものすごい面倒そうな青年とは対照的に、イザークは喜々として敬礼までしている。
 
「おまかせ下さい。」
そうして部屋から出て行こうとした2人に、『あっ!』と声をかけられる。
「なんだ、キラ」
先程までとは全く違う不機嫌な声は気にせず、キラと呼ばれた少年は付け加えるようにして言った。
 
『最近この森に迷い込むのが多いんだ。探し物の最中にもし見付けたら、臨機応変に対処しといてくれる?』
あ、でもたけのことトリュフは家までね。
にっこり微笑んだまま。
 
それが余計に訳わからなさを膨らますのだ。
妙な感じがした。
 
それがいい予感なのか、はたまた悪夢の始まりなのか。
わからないが、なにか自分の思考を一転させるようなことが起きるのではないか、なんて考えていた。
 
彼らにしても、彼自身にしても、退屈な毎日を覆すなにかが欲しかったのだ。
「少しくらい、のってやってもいいか。」
 
このちょっとしたゲームに。
 
 
 
 
 
 
 
 
そう思ったのはきっと間違いだったのだ。
溜め息をつきつつ、青年ディアッカは思う。
 
ディアッカ、こいつらもしかして」
「もしかしなくても人間だな。」
けれど一体どうして人間はここに入ってこられないはず。
 
ここらは『彼』の管轄地で、『彼』の許可なくして立ち入ることはできない。
気付くと森の入り口に戻っていたり。
それなのに。
 
「っていうか、あの崖から落ちて、こんだけの怪我ってのがどうも
目の前に横たわっている二人の少女を横目で見つつ、はぁと溜め息をついた。
 
 
 
しばらくしてザワリと木々がざわめいた。
すっとまた視線を元の場所に戻すと、随分と前に別れた少年が立っていた。
ぴらぴらと手を振っている。
『やぁ。』
「いや、やぁじゃねぇし。ってかお前透けてんぞ…」
『まぁね。精神だけだから、しょうがないよ。今買い物中なんだ。』
てへっという効果音がつきそうな笑みを浮かべている。
ぱっと見はこんなに無害そうなのに、と内心溜め息をつきつつ、ディアッカはピッと自分の背後を指差した。
「なんか入り込んでたぜ。」
『うん、みたいだね。じゃあそれでいいや、ウチに連れてきてよ。たけのことトリュフのかわりにさ。』
「…食べるのか?」
『まさか、イザークじゃあるまいし。ただちょっと興味があるだけ。』
僕じゃなくてね。
クスリとまた笑った。
 
さっきとは異なる、どこか違うところを見ているような、そんな瞳で。
紫の瞳は、ただただ禍々しく。
鬱蒼とした森の中、佇んでいた少年は少し目を細めて、そして消えた。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
うぅっ…一体何ヶ月ぶりの更新なんだろうとか思いつつ。
たけのこがなんの意味もなさない余計なモノになってしまった。
私が食べたかっただけなんですよぅ…><(ヲイ)
 
 
 
プラウザでバックをお願いします