「これは・・・楽しみですこと。」
少女が見つめているのは水晶玉
それは呟いた少女の瞳と同じように蒼くキラキラと輝く。
「なにが楽しみなの?」
そういって近くにいた少年は、少女の手元を覗き込んだ。
けれど水晶玉は本来の主に対してしか、中の様子を見せない。
「姫君とそのお友達がいらっしゃるそうですの。」
「姫君?」と少年が聞き返す。
「ええ。いいチャンスですわ。頑張りましょうね、キラ?」
『だ、だからナニを・・・?』
魔の巣窟
「お、お父様?正気ですか?」
少女が呆然とした顔で尋ねる。
「そうですわ、ウズミ様。カガリ様はまだ16歳でいらっしゃいます。そんな急がれる必要は・・・」
侍女のマーナもなんとかしようとこの小国の王、ウズミ=ナラ=アスハに考え直すよう求める。
「問答無用。そなたの姉たちもお前と同じ16歳で嫁にでておる。」
「けれどお父様。確かにマリュ―姉さんも、それに妹のフレイももう嫁にでておりますが、それは本人が望んだことでしょう?
私はあんな男大嫌いです。そんなことするくらいならここで舌噛み切って死んでやるっ!!」
「カ、カガリ様?!」
「まったくこのじゃじゃ馬娘が・・・。そんなにあの男が嫌いか?」
呆れながら王は問う。
「はい勿論。あんなやつと結婚するぐらいなら死神とでも・・・」
「よういうた、カガリよ。可愛い我が娘。言葉通り死神の元に嫁いで来い。」
「「えっ?!」」
「そんなバカな・・・だって彼らと私達とでは住む場所が違うではありませんか!!」
カガリの訴えを王は軽く退けた。
「お前も知っておるだろう。50年程前、化け狐の元に評判の占い師が嫁いだ話を・・・」
「なっ・・・あれはただの噂話でしょう?」
「さぁどうだかな。とにかく出発は1週間後だ。準備をしておけ。」
「えっ?!死神とっ?!」
「しーっ!!ミリアリア声が大きい。」
ここはカガリの自室。そこで友達兼お手伝いさんをしているミリアリアと話している最中だった。
「結婚はわかるけど・・・死神?っている訳ないじゃない。王様どうしちゃったのかしら?」
さすがのミリアリアも首を傾げる。
「そうだろ?あだ名かなんかかな、とも思うんだが・・・」
「『死神』なんてあだ名っていったらやっぱり・・・」
「「殺人鬼?」」
二人の声がそろう。自分たちで言っておきながらぶるっ、と身震いした。
「ミリアリア。」
しばらくしてカガリはまた考え込んでいた友達に声をかけた。
「どうしたの?」
「私、家出する。」
「・・・はぁ?えっ、でも・・・」
「いいから。ミリィはなにも見なかったことにしといて!」
そういう叫んだカガリをみると庶民的な服を着て、カバンを抱え、今にも窓から飛び出そうとしている。
「ちょ・・・カガリ?!待って!わたしも行くっ!!」
ところかわって、ここは森の中のお城
「で、ラクス。どんなお姫様がここに来るっていうの?」
先程の少年、キラは問う。
「迷子のお姫様。望みもしない相手と結婚させられそうになって、逃げてこられるようですわ。」
いまいちよくわからない答え方だが、それでもキラは納得したようだ。
「・・・僕もこれに参加しなくちゃならないの?」
おそるおそるラクスに聞いてみた。
「もちろんですわ!アスランはお城の主で、キラは執事さん。そして、わたくしはメイド。
ほら、必要最低限揃いましたわ。」
「僕が執事?アスランじゃなくて?僕この城の所有権、放棄した覚えは・・・」
「今回の主役はアスランですもの。少しはいい役を、と思いましたの。
それに、お芝居は1.2週間が限度。それ以上続くようであれば、主催者であるわたくしが『悪役』になって強制的に打ち切りますわ。」
ご安心下さいな、そういってラクスはキラに微笑んだ。
『それもどうかと思うけど・・・。』
「けどラクス。うちにはメイドさんなんていないから、そういった服はないよ?」
そんな言葉を受けてラクスはじっとキラをみつめた。
「なんとかできませんこと?キラ・・・」
「・・・頑張らせていただきます。」
そんなことを考えている人々がいるとは知らず、お姫様とその侍女の脱走は無事決行された。
やっと本編書き始めることができました。
自分の中でも最後まで完成できてないので、きっとその時その時で話が変わっていくと・・・。
う〜ん。難しいなぁ・・・ウズミさんも、ミリアリアも。
好きなのに・・・。
4.占いの水晶玉
12.おてんば姫
16.大脱走