きらきら。
最期に残るのはガラスみたいな結晶。
それ以外、なにも残らない。
そんな最期でも、君がいてくれるなら少し救われる気がする。
ひとりじゃないんだって。
ずっと、ずっと。
近くにいた。
ずっと、ずっと、前から。
きっと…
Imperfection dage
深い海の底。
そっと上を見上げ、降ってくるのはマリンスノー。
まるで本物の雪みたいに、白く柔らかく。
「きっとみんなが誉めてくれてるんだよ。」
誉めてくれるかな、と呟いた祐未にそう返した。
本当にそう思えるくらいに。
それは綺麗だった。
優しく、俺達を迎えにきたように…
*
わかってたのに。
どうしても苦しかった。
二人同時なんてありえない。
でも。
なんでお前が先なんだよ…
目の前の現実は堪え難く。
わかりきったことが、信じられずに。
「祐未…いなくなったのか…?」
俺達のこんな最期――遺体にもならず、ただの結晶になって…
そんなのが、本当に『死ぬ』っていうんだろうか。
「祐未…」
返事が欲しかった。
さっきみたいに優しく「なに?」って、聞き返して欲しかった。
血を吐くように、叫ぶ声は誰にも届かない。
*
深く深呼吸をした。
「祐未」
「なに?」
まだ海で降る雪にみとれているのか、ほわりとした柔らかい声が返ってきた。
「好きだ。いや、好きだった…多分、ずっと前から」
卒業していった友達の、最後にみた表情が背中を押す。
お前には未練がないのか?
そう尋ね返した俺に、ないと答えたあのすっきりした笑顔が。
彼女から「好き」とか、そういう言葉が欲しかった訳じゃない。
ただ伝えたかった。
もちろん、実は嫌われてたとかは傷付くし、その逆だったら…多分すごい嬉しいと思う。
それだけでいいと、思っていた。
けれどそれを手に入れてしまうと、またそれ以上を望んで。
叶わない未来を、かすかに夢見て。
「私、あなたのことを好きかどうか、わからない…そういうの、いつのまにか通り越してた…」
ただ『好き』じゃなくて。
それを含めた、それ以上のもの。
『好き』でも、たぶん『愛してる』でも足りない。
自分の中の最上級のもの。
「そっか…」
もっと早く告げてられてたら、なにか変わっていたかな?
疑問は言葉にせぬまま消えていく。
「今ここにいてくれるのが、あなたでよかった。あなたがいたから、私…」
言葉途中で、祐未の乗ったファフナーが崩れていく。
伸ばして掴んだはずの手をすり抜けて。
海の底の砂がゆっくりと舞い上がった。
*
「…これが俺達の戦いの全てだ。これをきいてくれるヤツがいることを、願ってる。」
運がよかったら、島に流れつく。
それは帰るっていえるのか、わからないけど。
「…どうせなら、自分で帰りたかったな。」
自分の足で島に立つ。
生きてても長生きなんて、とてもじゃないけどできなかったに違いないけど。
「でも少しだけでも。もう一度、あの島で…」
帰りたかった。
どんなかたちでもいい。
触れたかった。
もう一度、生身の彼女に。
*
目の前に金色に光るものが現れる。
それは神々しいほどに、禍々しくて。
海中にはいないとされていた彼等が、目の前にいた。
そうかれらは。
命、そのもの。
フィンネルが作動した。
目の前のフェスティムをも巻き込んで。
そうして機体の残骸やデータのみを残して、消えた。
*
島の海空は青く澄む。
数えきれぬ程の命を、呑み込んでもなお。
そこに映った、誰かの犠牲に彩られた一時の平和は。
ただほんの一瞬の時間。
けれどそれは確実に誰かの胸に届いていく。
それはたしかな未来への一歩。
一時だけではない、ながく続く平穏の為の。
*終*
2005年末にどかんと一発食らわされた話…『蒼穹のファフナー RIGHT OF LEFT』それ以来なにをやっても、なにを聞いても僚祐未に変換されるという…重症です。
それでなんとかしてこの感動を言葉にっ!とか思ったんですけど、無理でした。
見たひとでナイトわからない内容で、しかも時系列順に並んでない。
整理できたら書きます、順番を(笑)