きらきら。
最期に残るのはガラスみたいな結晶。
それ以外、なにも残らない。
そんな最期でも、君がいてくれるなら少し救われる気がする。
ひとりじゃないんだって。
 
ずっと、ずっと。
近くにいた。
 
ずっと、ずっと、前から。
きっと…
 
 
 
 
 
 
Imperfection dage
 
 
 
 
 
 
 
深い海の底。
 
そっと上を見上げ、降ってくるのはマリンスノー。
まるで本物の雪みたいに、白く柔らかく。
 
「きっとみんなが誉めてくれてるんだよ。」
誉めてくれるかな、と呟いた祐未にそう返した。
 
本当にそう思えるくらいに。
それは綺麗だった。
 
優しく、俺達を迎えにきたように…
 
 
 
 
 
 
わかってたのに。
 
どうしても苦しかった。
二人同時なんてありえない。
でも。
なんでお前が先なんだよ…
 
目の前の現実は堪え難く。
わかりきったことが、信じられずに。
 
「祐未…いなくなったのか…?」
俺達のこんな最期――遺体にもならず、ただの結晶になって…
そんなのが、本当に『死ぬ』っていうんだろうか。
 
「祐未…」
 
返事が欲しかった。
さっきみたいに優しく「なに?」って、聞き返して欲しかった。
 
血を吐くように、叫ぶ声は誰にも届かない。
 
 
 
 
 
 
深く深呼吸をした。
 
「祐未」
「なに?」
まだ海で降る雪にみとれているのか、ほわりとした柔らかい声が返ってきた。
 
「好きだ。いや、好きだった…多分、ずっと前から」
卒業していった友達の、最後にみた表情が背中を押す。
お前には未練がないのか?
そう尋ね返した俺に、ないと答えたあのすっきりした笑顔が。
 
彼女から「好き」とか、そういう言葉が欲しかった訳じゃない。
ただ伝えたかった。
もちろん、実は嫌われてたとかは傷付くし、その逆だったら…多分すごい嬉しいと思う。
 
それだけでいいと、思っていた。
 
けれどそれを手に入れてしまうと、またそれ以上を望んで。
 
叶わない未来を、かすかに夢見て。
 
「私、あなたのことを好きかどうか、わからない…そういうの、いつのまにか通り越してた…」
ただ『好き』じゃなくて。
それを含めた、それ以上のもの。
『好き』でも、たぶん『愛してる』でも足りない。
自分の中の最上級のもの。
 
「そっか…」
もっと早く告げてられてたら、なにか変わっていたかな?
疑問は言葉にせぬまま消えていく。
 
「今ここにいてくれるのが、あなたでよかった。あなたがいたから、私…」
言葉途中で、祐未の乗ったファフナーが崩れていく。
 
伸ばして掴んだはずの手をすり抜けて。
 
海の底の砂がゆっくりと舞い上がった。
 
 
 
 
 
 
「…これが俺達の戦いの全てだ。これをきいてくれるヤツがいることを、願ってる。」
運がよかったら、島に流れつく。
 
それは帰るっていえるのか、わからないけど。
 
「…どうせなら、自分で帰りたかったな。」
 
自分の足で島に立つ。
生きてても長生きなんて、とてもじゃないけどできなかったに違いないけど。
 
「でも少しだけでも。もう一度、あの島で…」
帰りたかった。
 
どんなかたちでもいい。
触れたかった。
 
もう一度、生身の彼女に。
 
 
 
 
 
 
目の前に金色に光るものが現れる。
それは神々しいほどに、禍々しくて。
海中にはいないとされていた彼等が、目の前にいた。
 
そうかれらは。
命、そのもの。
 
フィンネルが作動した。
目の前のフェスティムをも巻き込んで。
そうして機体の残骸やデータのみを残して、消えた。
 
 
 
 
 
 
島の海空は青く澄む。
数えきれぬ程の命を、呑み込んでもなお。
 
そこに映った、誰かの犠牲に彩られた一時の平和は。
ただほんの一瞬の時間。
けれどそれは確実に誰かの胸に届いていく。
 
それはたしかな未来への一歩。
 
一時だけではない、ながく続く平穏の為の。
 
 
 
*終*
 
 
 

2005年末にどかんと一発食らわされた話…『蒼穹のファフナー RIGHT OF LEFT』それ以来なにをやっても、なにを聞いても僚祐未に変換されるという…重症です。

それでなんとかしてこの感動を言葉にっ!とか思ったんですけど、無理でした。

見たひとでナイトわからない内容で、しかも時系列順に並んでない。

整理できたら書きます、順番を(笑)